CREATIVE
INTERVIEW

クリエイティブ インタビュー

TETSUYA CHIHARA (LEMON LIFE)

PARCO 2017AW-2018SS / CREATIVE INTERVIEW
TETSUYA CHIHARA (LEMON LIFE)

ファッション広告からCDジャケットや本の装丁。その他にも雑誌やWEB、イベントなど、ジャンルや媒体を超えた多岐にわたる活動を続けるアートディレクター、グラフィックデザイナーの千原徹也。その幅広い活動内容や、ウィットに富んだデザイン性において、M/M(Paris)から強い影響を受けていると公言する彼にパルコのキャンペーン広告はどう写っているのか。

— これまで長年に渡り、M/M(Paris)の多くの仕事や作品を見続けてきたという千原さんにとって、今年のパルコの広告はどのように写りましたか?

まず、スタジオ撮影という点に珍しさを感じました。M/M(Paris)が手がけるファッションビジュアルはロケーションでの撮影のイメージが強く、彼らがスタジオを使うのは人が文字になっているなど、被写体をグラフィックの素材として使用している印象でした。パルコのキャンペーン広告もこれまでは、ロケーション撮影が続いていたので、ガラリと印象が変わったなと感じました。ただ、それでもM/M(Paris)の感覚は十分に生きていると思います。パルコが商業施設であり、広告に長い歴史があるという点を、彼らはしっかりと理解し、良さを引き出せたのがポイントではないでしょうか。服をどう見せるかではなく、感覚的にパルコという存在を視覚化出来ていますよね。ファッションブランドのキャンペーン広告や、劇場の宣伝ポスター、彼ら自身のアートワークなど、M/M(Paris)が手がけてきたものを幅広く見続けてきましたが、僕が好きなものにはファッション広告が多いんです。2001年のカルバン・クラインの広告は衝撃的で、今でも好きな広告のひとつです。劇場ポスターなど自由なクリエーションが許される仕事は、仕上がりもどこか複雑すぎて理解するのが難しい。逆にファッション広告はブランドの服をどう見せて欲しいといった要望も多いので自由な制作とはいかず、表現が難しい場合もあります。その点で、このパルコの広告に関しては、ファッション広告と劇場ポスターの間を行っていると思うんですよね。制限もあるけれど、自由もあり、バランスがいい。彼らの色が程よく出ています。

毎年、ムービーもいいですよね。荒い画質や音楽も絶妙なバランスで、センスが光っています。特に音楽は感覚だと思うんです。編集の技術も感覚を持ってないとかっこよく仕上がらない。広告を手がけている人はコンセプチュアルになりすぎて退屈になりがちですが、M/M(Paris)はファッション感覚を持っているんでしょうね。

— 千原さんが感じるM/M(Paris)の良さ、そして彼らが手がけるパルコの広告の特徴を教えてください。

予想を覆すというか、誰もが想像していない終着点に到達するのがM/M(Paris)なんです。彼らは一般的に広告を作っている人には思い浮かばない発想を持っています。ヴィヴィアン・サッセンと共に作った1年目の広告に出て来た金色の顔がそれを物語っていて、意表を付く発想ですよね。今回も、パルコのロゴの上にタイポグラフィーを乗っけて、結果的に「PARCO」が一番奥になっている。リスペクトも見えますが、日本人ならまずやらないと思います。文化の違いももちろんあると思いますし、僕らとは感覚や言語も違うので、どれだけコミュニケーションを図ってもクライアントの意図を完璧に理解するのは難しい。でも、そこが良いんだと思います。だからこそ彼らの色が発揮され、新しいものができる。僕もある意味で、話が通じない人になりたいと思っています。クライアントの要望を意図としては踏まえつつ、色々な解釈があったほうが面白いし、違った観点から物事を提案していきたい。その方が表現の自由度も増します。意外性を持ち出した時に、受け入れてもらえるキャラクターになる必要がありますよね。M/M(Paris)はアートディレクターとしての理想の形。もはや許されちゃうっていう……、それも彼らの実力ですね。

マス広告はわかりやすく作りがちですが、今回のように、違和感で人を惹きつける方が魅力的ですし、エネルギーを感じます。理解するのは難しいけど、逆に意図がわからない良さがあり、強い印象も残ります。広告だけでなく洋服やアートなどにも言えますが、意図が分かると面白くなくなり、かっこよく見えなくなることがありますよね。パルコのキャンペーン広告は、視覚的に違和感を生み出し、感覚的なかっこよさがあり、今だけではない歴史に残る広告になっていると思います。ロジックはあるけど、それはパッと見ただけでは分からず、感覚的に人の心に刺さる。でもスタイリングを見るときちんとシーズン感もあり、海外っぽさもあり……、すごく成立していますよね。実はちゃんと考えられいてるんだと思いました。

あと、こういう規模で露出する広告では、いい意味で力を抜いていくことも重要だと思います。いつも思うんですけど、彼らの仕事はどこか子供っぽい。大人になりたくないようなデザイン性にとても惹かれます。全てを綺麗にまとめ過ぎないのも彼らのテクニックですよね。特に最近のM/M(Paris)は、力を入れ過ぎていないのがわかります。昔のタイポグラフィーを全面に押し出した作品などは結構複雑に完成させていたけど、このパルコのタイポグラフィーを見ても、さらっと仕上げているように見えます。SNS社会になり、一般の人が放った魅力的な言葉がバズる時代。かつてはプロだけが世の中に発信できたが、有名なコピーライターじゃなくてもSNSを通じて発信できる時代になった。プロがうまく加減できるようにならないといけないんじゃないかなと思います。

— そもそもPARCOがM/M(Paris)を起用したことに関しては、どう思いましたか?

単純にすごいなと思いました。どうなるのか予測が付かないはずですし。きっとこれまでパルコが歩んできた歴史があるからこそ、彼らを起用できたんでしょうね。でも相性はとてもいいと思います。彼らも石岡瑛子さんが手がけた頃の雰囲気を意識しているようですし。パルコを理解し、昔から変わらないパルコ独特の感覚を受け継ぎ、リスペクトもあり、そして親日家でもあるので、彼らのような人たちが手がけるべきですよ。M/M(Paris)のディレクションで10年くらいは続けて欲しいです。パルコの広告として見るのも楽しみですし、自分が刺激を受けるものとしても毎回楽しみにしています。ファッション写真だけではなく、彼らがどう編集するのかも面白い。今後どのような展開で進めるのか見続けたい。2019年に完成する渋谷パルコもどんな風になるのか期待しています。渋谷は駅前でショッピングが完結するくらいになるようなので、渋谷パルコのある公園通りあたりはニッチな客層が集まるエリアになるんじゃないかと思います。でもパルコは変わらないで欲しいですね。M/M(Paris)の作品は“パルコらしさ”を象徴しています。これまでのパルコを見てきて、その歴史も理解している。そこにフランス人ならではのファッションやアート、演劇など様々なカルチャーを総合芸術として捉えられる感覚が、見事にパルコとマッチしています。本当にこれからも続けて欲しいです。

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