お歳暮|ふと、ギフト。パルコ|PARCO GIFT お歳暮|ふと、ギフト。パルコ|PARCO GIFT

COLUMN

お歳暮

 お歳暮と聞くとおばあちゃんちのにおいがする。子供の頃、年末に田舎へ行くと仏壇の前にいっぱい並べられていた。おじいちゃんが9人兄弟の長男で親戚が多い分お歳暮も多かったんだと思う。100%ジュースの詰め合わせが毎年必ずあって、僕はそれをもらうのが楽しみだった。

 ご先祖さまへの感謝を表すために贈り物をしたのがお歳暮の起こりらしい。今ではもうちょいカジュアルになって、お世話になっている人へ日頃の感謝の気持ちを込めて12月に贈り物をすること、らしいけど僕には全くそういった習慣はない。年末といえばクリスマス。クリスチャンじゃないけど。まあ楽しいしいいじゃんって感じで。友達と、恋人とワイワイしたりしっぽりしたりでやってきた。

 大人になって何年か経った。東京での暮らしも慣れて、そこそこ働いて、まあ人並みに生きている。今年はコロナとか、個人的にもけっこう大きな出来事がたくさん起こった。それでもなんとか乗り越えつつある。で、最近ふと気付いたことがある。こうやって普通にそこそこ忙しく、そこそこ楽しく暮らしていると、他人にちゃんと感謝を伝える場面って案外ないんだね。プライベートにしても仕事にしても、その場その場のありがとうはある。箸とってー、ありがとー、とか。執筆依頼ありがとうございます、とか。でもあらためて腰据えて「とても感謝してるんです」って言える場面はない。そんなんいらないじゃーん持ちつ持たれつ適当にやってこーやあーというスタンスで生きてきたけど、そういうこと、ちゃんと伝えていった方がいいよなって思い始めてる。歳を重ねるごとに、ひとりじゃ生きていけねーてことを身にしみて分かってきたからだと思う。

 だからクリスマスでもお歳暮でもなんでもいいけど、感謝を伝えられる便利な習慣を作ってきた人間超偉いじゃんと思うし、全面的にノッていきたい所存。今まで通りワイワイ騒ぐのもいいけど、贈り物をしたり、お涙頂戴のお手紙読み聞かせでもしてやろうかマイ・フレンズ!もしくはマイ・ペアレンツ!くらいの気持ち、あり。多分恥ずかしくてやらないけどね。だからやっぱなんか贈るのがいいね。詰め合わせだと仰々しいから、小さい美味しいジュース一個づつ、みんなに配って歩こうかな。

夏目知幸(なつめ・ともゆき)

1985年、千葉県生まれ。浦安で結成され2009年にデビューしたロックバンド、シャムキャッツのヴォーカル&ギターとして活動。2016年に自主レーベル〈TETRA RECORDS〉を設立。2020年6月にバンドの解散を宣言。10月にはベストアルバム『大塚夏目藤村菅原』をアナログリリースしたほか、渋谷パルコGALLERY Xにて『Siamese Cats Farewell Exhibition』展を開催。現在はソロでの弾き語りライブ、楽曲提供、DJ、執筆、アート作品制作など多方面で活躍中。
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